私は大学院在学中に既卒として就職活動を行い、無事に内定をもらったあと、大学院を中退しました。
大学院を辞める決断は消して簡単ではなく、不安や迷いもたくさんありましたが、この経験を通して、既卒としての就活の進め方や、中退の決断の判断基準が明確になりました。
この記事では、私の体験をもとに、「大学院在学中に就活して内定を得るまでの流れ」と、「中退を決断した考え方」を詳しく解説します。
中退を考えているけれど,実際にどういう順序で動けばよいのかわからない,中退するまでにどういうことをしたらよいのかわからない,といった方の参考になれば幸いです。
大学院進学前に抱いた違和感と挫折【学部4年・1月~3月(院進直前)】
学部4年の冬、大学院進学を控えながら、研究に対する違和感がはっきりしてきました。具体的には以下の2点です。
- 専門分野そのものへの興味が薄れていたこと
- 実験が不器用で、研究職に向いていないと感じたこと
学部3年の後半で研究室配属されてからすでに1年半。努力不足では?と自問もしましたが、10回ウエスタンブロッティングを試して10回とも失敗する現実は、適性の問題だと痛感しました。
このまま研究を続けても成果は出せず、薬品を浪費するだけの研究者になる…そう強く思ったのです。
そして,ウエスタンブロッティングができないということは,研究も進めようがありません。
加えて、指導が適当な「放置系研究室」を選んだ判断ミスも大きな要因でした。研究への熱意も次第に冷め、「大学院に進学しても続けられない」=「いずれ中退するのでは?」という不安が膨らんでいきました。
大学院生でも受けられる公務員試験に挑戦するも不合格【M1・4月~7月】
恋人の勧めもあり、この頃「大学院を中退するなら公務員になれるのでは?」と考え、公務員試験を受けてみることにしました。
大学院生でも「大卒」枠で公務員試験を受験でき、受験料もかからず挑戦しやすいのです。私は国家公務員や都道府県(市町村)などの地方公務員の試験を受けましたが、結果は残念ながら不合格でした。
当時はかなりメンタル不調に陥っており、勉強に集中できなかったこともありますが、そもそも「大学院を辞める」という覚悟がまだできていなかったのも大きな理由かなと今では感じます。中途半端な気持ちでは結果を出せないと痛感した体験でした。
院を辞める,という覚悟もできていなかったのだと思います。中途半端だと何の結果も得られないな,と痛感した出来事でした。
この時点ではまだ「就活に本腰を入れる」決心はつかず、放置研であることを逆手に取って、「なんとか、とりあえず修士を修了するか」と考え始めていました。
友人の公務員合格と大学院中退が転機に【M1・8~9月】
前述の公務員試験を受けた際、同じ時期に中退を考えていた友人にも声をかけ、一緒に受験しました(分野は異なります)。その結果、友人は公務員試験に合格し、翌春からの仕事を手に入れることに。そして前期で大学院を中退することを決めました。
この報告を受け、私は強いショックを受け、メンタルの不調が悪化して学校にほとんど通えなくなりました。「私は院を辞められないのに」「教えなければよかった」「能力に差はないのに」――そう考えては八つ当たりをしていました。
ただ、この出来事が最終的に私の就職活動への大きなきっかけとなり、内定へとつながることになります。
大学院中退に向けて、初めての就活をスタート【M1・9月~10月
しばらくメンタルが落ち込み、引きこもる生活が続いていましたが、自分の負けず嫌いな性格に気づき、「内定を獲得すれば元気になれる!」と一念発起しました。
ダラダラと院に残っていても,一応修士を出られるだけのデータはあったのですが,研究室にはモチベーションの低い学生や、アカハラ気味の指導教員、モラハラ気味の教授がおり、この環境であと1年半やっていくのは難しいと感じていたことも大きな動機です。
リクナビ・マイナビ、既卒可の転職サイトに登録し、エントリーシートを作成する日々が始まりました。

その中で気になる会社に応募し、初めての就活で二次面接まで進むことができましたが、三次面接の手前で不合格通知を受けました。「やはり内定は無理なのか…」と精神的に落ち込みましたが、この経験が就活を本格化させるきっかけにもなりました。
教授との面談でさらに大学院中退を意識【M1・10~11月前半】
久しぶりに学校に行くと、准教授に呼び出されました。内容は「学校に来ないでどうするつもりか」という確認でした。
私は正直に、「研究に熱意がなく、大学院を辞めたい。しかし親の意向もあり、今はまだ中退できない」と伝えました。その後、教授にも同じことを聞かれ、繰り返し同じ説明をする日々。研究室に所属している学生としては、最低な発言ですが、取り繕うこともできないくらい、精神的には限界の状態でした。
また、指導教員(助教)との関係修復が困難であることも伝えましたが、教授からは「努力不足ではないか」「助教も君を助けようとしている」と否定される結果に終わりました。
研究を行わない学生を研究室に置くことは、教授にとってもメリットがないため、私の進退をどうにかしたい思いが全員にあったことは間違いないでしょう。
結局、年内は就活に専念することを教授に宣言し、ヤケクソになりながら内定を頂いた会社を含む数社にエントリーシートを提出、業界研究を行いながら面接に臨むことになりました。
内定獲得で大学院中退を決意【M1・11月後半~1月】
教授との面談後、エントリーした会社の選考を進め、最終面接が確定した頃のことです。
当時のアルバイト先からも「正社員として働かないか」と誘われました。就活中であることは社員に隠していたのですが、なぜかバレていたようです(笑)。この話の直後、選考を進めていた記号から内定が出ました。
内定を頂いた企業とバイト先、それぞれの条件を比較しました。一生同じ仕事を続けつつ家庭を大事にできる職場か、さまざまなことに挑戦できるが就業時間が特殊な職場か。十分に検討した上で、最終的に今の会社への就職を決意しました。

その後、教授と研究室メンバーに「内定をいただいたので辞めます」と報告。承諾書を提出して、私の就活は終了し、大学院中退が決定しました。
大学院中退をTwitterで報告したら反響がすごい【承諾書提出後】
承諾書提出後,大学用のTwitterアカウントで「内定をもらったので大学やめます!」と呟きました。
案の定、同級生や先輩後輩から多数のリプやLINEが届きました。これまで散々「やめたい」と話してきたのに、今更信じてもらえないのは当然です。大学院中退は、それほど信じがたい決断なのだと思います。
幸い、皆さん私のメンタルが限界であることは理解してくれていたようで、「大学院続けなよ!」という声はなく、「おめでとう!」「よかったね!」という祝福が中心でした(中にはゴシップ目的の反応もありましたが…)。
大嫌いだった大学でも、私の中退を惜しんで泣いてくれる友人や「憧れです」と言ってくれる後輩に出会え、大学選択への後悔は少し和らぎました。この大学に入ったからこそ出会えた人たちだと感じ、最後には大学にも感謝する気持ちになりました。

院進学を考える大学生に伝えたい、大学院中退の経験からのアドバイス
大学院中退を経て就職した経験を報告したところ、後輩の大学生から「自分の好きな人生を歩むなんてかっこいい!」という声をいくつかもらいました。
しかし、誤解しないでほしいのは、「大学院を辞めること自体が良いことではない」という点です。研究に向いているかどうかは4年生の時点で判断すべきですし、決めたなら途中で投げ出さないのが理想です。
大学生の皆さんには、自分が人生の大事な時期にあることを意識してほしいと思います。モラトリアムになりがちですが、この期間は自分の将来を考え、行動を見直す大事な時間です。
また、「大学は意味がないので辞めます」と考える学生もいますが、大学入学直後、その判断力は十分ではありません。学費を親に出してもらっている場合も多く、十分に育っていない学生の判断力だけで退学を決断するのは時期尚早です。学業とやりたいことのバランスを考えることは、将来役立ちます。
それでも「辞める」と決めるなら、無理には止めません。ただし、大学生は自分が思っているよりも、周囲の助けを受けていることは分かっておきましょう。大学生は、多くの大人の意見を聞きながら、自分の人生の舵を取る訓練をする期間です。
私は大学院生活と研究者という目標を「諦めた」わけですが、あのまま続けていたらとりかえしのつかない精神状態になっていたと思います。大学院を辞めた決断を「馬鹿なことをした」ととらえるのではなく、その経験を財産として、次のステップに進んでいくつもりです。
自分の人生を肯定できるようにこれから先も努力をしていこうと思います。もしかしたらまた「諦める」ことがあるかもしれないけれど。それでもその経験を財産にして,その次に進んでいけるように生きていくつもりです。
